恋にうつつのCrazy!
番外編

人の気持ちというものは、変化していくものだと最近とみに思う。
いつまでも一つことでは満足できない。
いつまでも欲はつきない。
陽を手に入れたと言うのに、それだけでは足りないと思う自分が心の隅にいることを自覚する。
側にいたい、声をききたい、独占したい。
陽の側にいる女には嫉妬する。
笑っているだけでも許せなくなる。
三日間、家に閉じ込められていたせいか、それとも記憶を取り戻したせいか、今日の陽はいつにも増して機嫌がよく、愛想もすこぶるいい。
今も、隣同士に座る野郎と楽しそうにしゃべっている。
授業中だから、割って入っていくわけにもいかず、成巳はもんもんとして過ごさなければならなかった。

「陽っ!」
 成巳は授業が終わると同時に教室を出て行こうとした陽を慌てて呼び止めながら、駆け寄った。
「何だよ?お前もトイレ?」
 なんて無神経なことを平気で言う陽のセリフには、このさいぐっとこらえるとして、成巳はそのまま無言でトイレへと陽を連れこむ。
「痛ぇーよ、成巳!手、離せ」
「離さないからな、俺はいますごく腹を立ててるんだ」
「何で?」
「授業中は俺がお前としゃべれないのに、座席の近い奴はお前としゃべれるからだ」
「・・・・・・そんなこと言われたってなぁ。じゃ、お前が今度の席替えで俺の側を根性でゲットすればいいじゃん?」
「そういう問題じゃない。キスするぞ、陽」
 話ながら、いつの間にか成巳にトイレの個室の方へと押し込まれて、押さえ込まれた形になっていた陽に、成巳が有無を言わせない調子で確認してくる。
「嫌だっていってもするんだろう?」
「あたりまえだ」
「ならいちいち確認するなよなぁ・・・・・・面倒くさい奴だ」
「黙ってすると余計におこるだろうが?」
「怒らねーよ。だってお前、俺の恋人だもんよ?」
「・・・・・・そんなもんなのか?」
 いつもふざけてでもキスしようものなら、目を剥く勢いで怒られつづけてきた成巳としては、信じられない言葉のあまり、キスする動作を止めて、まじまじと陽を見返してしまった。
「そんなもんだろ?恋人なら怒ったりしねーよ、俺だって」
「・・・・・・それ以上のことは?」
「う〜ん、それはちっと学校では勘弁して欲しいけど、お前がしたいってんなら、別にいいぞ?」
 思わず鼻血を吹いてしまいそうな陽の言葉に、成巳はズルズルと陽の体を抱きしめたまま、ちょっと汚いなぁと思いつつも、トイレの個室の床に沈みこんだ。
 そのまま陽の体をぎゅっと抱きしめている。
「汚ねーな、成巳。トイレの床になんか座るなよな」
 文句を言いつつも、成巳に抱きしめられたまま、陽は大人しくしている。
 成巳は陽の体を自分の膝の上に乗り上げさせてやるようにしながら、ため息をはいた。
「何だ?何落ち込んでんの?」
「自分に自己嫌悪中なんだよ、俺は」
「はぁ?さっきの会話から何でそんなことになるんだ?俺とやんのが嫌なのかよ?」
「んなわけないだろうが・・・・・・違うよ、こんなことならもっとさっさとお前に告白しとけばよかったって思ってんだよ。何のために俺が何年も何年も我慢したんだか。はぁ・・・・・・お前がそういうのが嫌いだろうと思ったから、我慢の限界になるまで黙ってたのに、何でそんなにあっさりしてんだよ、陽は?」
 肩に顎を乗せられたまま成巳がしゃべるくすぐったさに耐えつつ、陽はしばらく考える。
「そりゃあ、俺がお前のこと好きだからじゃねーの?」
 陽の言葉に、今度こそ成巳の体が硬直する。
「今、何て言った?」
「いや、だから俺がお前のことが好きだから、許せるんだって言っただけだぞ?」
「いつから?」
「いつからって・・・・・・そりゃずっとだろう」
 悪戯を見つかった子どものように、陽がペロリと舌を出す。
 成巳にはもう何年も何年も内緒にしてきたことだった。
 告白されても、意地悪で言ってやらなかった言葉をすらすらと言えてしまえるぐらい、何だか昨日までの三日間の甘い時間が陽を素直にさせているらしい。
「ずっとっていつだ?」
「知らねーよ。そんなの覚えてるわけないじゃん」
「覚えてないぐらい昔からなのかーっ!?」
「教えねーよ。お前いろんな女と遊んでムカツク思い出ばっかり思い出したくねーんだもん」
「馬鹿みたいだ・・・・・・」
「何?」
「馬鹿みたいだつて言ってんだよ。こんなことならさっさとくどくんだった。我慢なんかせずに、どうでもいい相手となんか遊ばずに、さっさと陽のことクドいとくんだった」
 真面目な顔でそう言い切ると、成巳は陽に突然口付けた。
 そのまま勢いあまって、トイレの便器に陽が頭をぶつけて、抗議の声をあげるまで、成巳の長い長〜いキスは続くのだった。
 やっぱり言うのを早まったかなぁ・・・・・・などと思わないわけではなかったけれど、ま、長い遠回りをしたんだから、これぐらいの甘々は許されるのではないだろうか、と陽は密かに思っている。






おわり

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★コメント★
恋クレ番外編です♪
私は番外書くのが一番らくちんで楽しくて好きなんでよね〜。
うふふ。もう一回番外が続きますので、宜しくです(^−^)




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