【バレンタイン戦争】
バレンタイン当日
きつく睨んだ視線の先には、赤い顔をした女の子がちょこんとたっていた。
よく見ると、それは時々委員会で一緒になる五組の加藤紗枝だということにフミは気づいた。
今にも臨戦態勢だったファインティングポーズを緩め、ぼんやりと彼女を見つめる。
「あの・・・・・・・」
何か言いたそうに、何度フミのことを見てはまたうつむいてしまう彼女に、フミは小首をかしげた。
いつもはもっと笑顔の可愛いハキハキとフミにも喋りかけてくるさっぱりとした女の子なのだ。
「どうしたんだよ、加藤?なんか具合でも悪いのか?」
フミは固まったままの彼女に数歩近づくと、顔を覗き込んだ。
熱があるのかと心配するほど顔が赤い。
加藤紗枝は手に抱える小さな包み紙を自分を覗き込んでくるフミに向かって思い切って差し出した。
「・・・・・・何、これ?」
今日がバレンタインで、自分はチョコをとっても欲しがっていたことなど、さっきのダブルショックですっかり忘れているフミは、渡されたチョコを怪訝な顔で見つめて受け取ろうとしない。
「あの、あの、貴之くんから聞いてもらってるとは思うんだけど、やっぱり自分で言いたいし、渡したかったの!ずっと委員会で一緒になってからずっと貴文くんのこと好きでした!良かったら私と付き合ってください!」
走って走って逃げ込んだ先の裏庭は、なんと図書館の裏庭だった。
もちろんヒコもユキもフミには加藤紗枝の伝言は伝えてはいない。
着いたのはまったくもって偶然のなせる業なのだが、そんなことは知りっこない加藤紗枝は、現れたフミに勇気を振り絞っての告白をしたというわけだ。
「・・・・・・」
今日はフミにとってまったくもって青天の霹靂日。
男二人に告白され、最後が今まで一度としてなかった可愛い女の子からの告白だ。
いつものフミならばきっともっと真剣に彼女のことを考えただろう。
けれど、今は藁にもすがる思いというのだろうか、渡りに船というのだろうか、危ない男どもから逃げるには、彼女と付き合うしかないっ!となぜかフミの脳みそはそう答えを出した。
加藤のことはもともと知っていて、可愛いとは思ってもいたが、恋愛感情というものをまだ初恋も迎えていないフミに分かるわけがない。
けれども、特定の恋人ができた人物には、アタックしてくるやからは退くのだという簡単図式のできあがってしまったフミの単細胞の脳みそは、答えを弾き出すや否や、彼女をチョコレートごと抱きしめた。
「喜んで!俺を助けてくれ、加藤!」
「え?助けてって、え?」
抱きしめられながら、何がなんだか分からない加藤紗枝はきょとんとしたままフミの腕の中に納まっている。
自分の手の中にちょうど納まる小さな体に、フミはドキンと心臓が脈うつのを感じた。
あまりのそのやわらかさに、慌てて手を離す。
無我夢中で縋り付いたつもりの相手が、自分よりも小さくて壊れてしまいそうな女の子だったことをようやく理解したのだ。
「あ、あ、ごめん、いきなり抱きしめたりして!あの〜その〜えっと・・・・・・・そう、エイリアン、エイリアンに遭遇した感じで、えっと、突然知ってる人間が中身だけ知らない人間になっちゃったみたいな、で、びびっちゃって俺・・・・・・えっと・・・・・・ごめん、何のことか分からないよな」
ぼりぼりと頭をかくフミに、加藤が花のように小さく笑いながら、首を横に振った。
「よくわからないけど、私と付き合ってくれるのは本当なんでしょう?」
「うん、うん、そうっ!」
加藤のかわいらしい問いに、フミは慌てて何度も頷く。
こういうのを怪我の功名というのだろうか・・・・・などとぼんやりとしながら考える。
とうとう自分には憧れの可愛い彼女ができたのだ。
ゲンキンなもので、そうなるとさっきまでの追い詰められたネズミの心境など忘れてしまって、なんだか頭の中が春真っ盛りになってきてしまう。
フミはさっきまでおびえていたことなど忘れて、加藤から念願のチョコを受け取ると、嬉しそうに肩を並べて教室へと戻っていく。
それを一部始終、背後からユキが見ていたことなど気がつきもしないで・・・・・・。
【つづく】
★おいしいとこどりの加藤紗枝ちゃんでした〜。
やっぱりボーイズの世界といえども、可愛い女の子にも登場していただかないとね。
男同士でばっかり好きになっていくのはちょっと華やかさにかけるので、まぐはなんだかんだといつもライバルには女の子を出してきちゃいます。
間男も好きだけど(笑)
ユキだけ告白しそこねて可哀想なことをしちゃったわ〜。
彼にもチャンスは与えてあげたいですが、暑さでダウンです(^-^;)
牛のような歩みだなぁ〜私の書く話って。夏休みは創作に励むつもりだったのですが、すでにもう夏休みが半分終わろうとしている・・・・うう(T.T)
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