【バレンタイン戦争】

 バレンタインの翌日
 
「はぁ!?」
 ヒコは飲ませた日本酒でべろべろに酔っ払っているフミのとろんとした視線を見返しながら、驚愕に声をあげた。
 食事を終えた二人は、リビングへと移動し、酒盛りを始めて早二時間。
 フミは完全にできあがってしまっていた。
 ようやく吐き出した言葉が、ヒコを驚かせている。
「今、なんていったんだ、フミ!?おい、寝るな!もう一度言え!!」
「ん〜眠いよぉ〜」
 ガクガクと体を揺さぶられながら、フミは眠そうに目をこする。
「こらっ!おい、フミ、朝倉となんだって!?」
「ん〜だから〜一週間お試しで・・・つきあうんだってさぁ〜」
 人事のようにフミが朝倉から言われた申し出の話をする。
「付き合うって、お前と朝倉がか!?」
「そ・・・でも俺ちゃんと三日考えるって言ったぞ〜えらいだろ、ヒコ?ヒコに言われたことちゃんと守ってるからなぁ〜」
 酔っ払いはニッコリと極上の笑顔でヒコに微笑み、自慢するように胸をはった。
 言われたヒコはそれどころではない。
 朝倉と付き合うなんて、たとえお試し一週間といえども許せるものではない!
 狼の前に羊を差し出すようなものだ。
 そんなことがわからないのは鈍いフミぐらいのもの。
「馬鹿!そんなことは三日も考えないで即答で断るんだよ!朝倉の野郎がつけあがるじゃないか!こら、フミ、聞いてるのか!?」
「聞いてるぅ〜大事なことは三日考えるんだよなぁ〜分かってるって〜」
「違う、そうじゃなくて、そんなことは考える必要もないんだよ!明日行ってすぐ断ってこい!いや、お前が行くと危険だから、俺が断りに行く、いいな!?」
「え〜だめじゃん。約束はぁ〜守んないと〜」
 チッチッチッと指を自分の顔の前で横に振りながら、酔っ払った赤い顔でフミが笑う。
「いいから断れ!断らないとこの場でキスするぞ!」
「え〜キス?いいよ、別に〜キスなんて一回しちゃったらあとは何回しても同じじゃ〜ん」
 フミは朝倉から言われた言葉をそのままヒコへと返す。
 ヒコにはその言葉が朝倉から言われた言葉だとわかるだけに、一層腹がたってきた。
「おまえ、朝倉にそんなこと言われたのか!?そんなこと言われても付き合うの考えるっていうのか!?馬鹿じゃないのか!?」
「馬鹿馬鹿何回も言うな〜俺は馬鹿じゃねーぞ〜」
 ポカポカと酔っ払いの怪しい力でヒコを殴りながら、デレンとヒコへとフミが抱きついてくる。
 酔って理性も意地もすべてなくなっているようだ。
 今までそうやってヒコに甘えてきたように、いつものようにヒコの背中におんぶお化けのように張り付いたり、膝枕をねだったりと、近頃ずっとそうやって甘えたいのを我慢していた鬱憤を晴らすように、フミの甘えっぷりには際限がない。
 ヒコは体中の理性を総動員してそれを堪えねばならなかった。
「・・・・・・日本酒なんて飲ませるんじゃなかった。おい、フミ、起きろ」
 パシッと頬を叩いてみても、ニッコリと笑うだけで、ちっともヒコから離れる気はないフミ。
「・・・・・・まじで話どころじゃなくなってきた・・・・ユキの奴を待機させるんじゃなかったな・・・・」
 ここは自分がちゃんと聞き出すからと、警戒心を抱かせないように二人はまずいとユキを説得して、ヒコとフミは二人きりで飲んでいたのだ。
 今頃ユキはすでに夢の中だろう。
 いや、起きていたとしても、こんな状態のフミをユキに預けるのも心配だ。
 自分と間違われてこんな甘え方をされたんじゃ、嫉妬で焼け死んでしまう。
 すーすーと気持ちよさそうな寝息をたてて、自分の膝枕で寝始めたフミの頬をヒコはそっと撫でた。
 手触りのいい肌に、吸い寄せられるようにして唇を近づけていく。
 頬に小さく口付け、酒臭い息のする唇に笑いを漏らしながら軽くキスを落とした。
 どうかこのまま目が覚めないようにと祈りながら。
 そっと自分の膝から頭を退かせ、絨毯の上へとゆっくりと下ろす。
 愛しそうに何度も何度も頬を撫でると、そっと自分もその隣に横たわった。
 自分の手の中にフミを閉じ込めたまま、
「好きだ」
 とヒコは真摯につぶやく。
 その言葉はフミに届かないと分かっていたけれど、言わずにはいられない気持ちがもう喉元までせり上がってきていた。
 限界に近い自分の理性を感じながら、ヒコはもう一度フミにキスを落とした。
 三つ子なのに成長が途中で止まってしまったかのようなフミの華奢な体。
 そっと首筋から肩、腰までとその形をなぞるように指を這わせていく。
 愛しさで指先が震えるのをヒコはおかしく思った。
 緊張しているというのか?
 こんなに触れたくて触れたくてしかたなかったフミに触れている現実がヒコをひどく緊張させる。
「俺もまだまだだな・・・・・・いいか、フミ。朝倉なんかには絶対に渡さないからな。いや、朝倉じゃなくても、ほかの誰にもだ。俺は本気だからな」
 すやすやと気持ちよさそうに眠っているフミへと宣言すると、ヒコはその思いを分からせるように落としたキスを深くした。

 




  


【つづく】



★・・・・・・長いブランクを感じます〜(>.<)
 ボーイズラブってこんな難しかったっけ!??
 これ以上は無理です(-.-;)
 ふぅ〜と一息。
 皆様、長らくお待たせしての復帰がこの程度で申し訳ありません(-.-;)




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